給食で生じる食品ロスを削減するための対策や取り組みとは?
食べられる食品がさまざまな理由から大量に廃棄されてしまう食品ロスの問題。日本だけでなく、世界においても経済・環境に深刻な影響を及ぼします。
食品ロスは、病院や福祉施設、学校、事業所(社員食堂)といったさまざまな施設で食事提供をする「給食」とも無関係ではありません。というのも給食現場では大量調理が行われ、食材の仕入れから調理、提供、食べ残しにいたるまであらゆる段階で食品ロスが生じているためです。
しかし、食品ロスが生じる原因に対応した改善策を講じることによって、給食施設においても食品ロスの大幅な削減が可能です。
本記事では、給食による食品ロスを抑えるためにはどのような対策が必要かについてまとめました。
目次
食品ロスとは?
食品ロスとは本来食べられるのにも関わらず、食べられることなく廃棄されてしまう食品のことを指します。
主に「事業で生じる食品ロス」と「家庭で生じる食品ロス」の2種類に分類されます。
項目 | 内容 |
事業で生じる食品ロス | ・規格外品 ・返品・売れ残り ・見た目を揃えるための可食部の廃棄 など |
家庭で生じる食品ロス | ・食べ残し ・手つかずの食品(賞味期限・消費期限切れ) ・食品の過剰除去(皮の剥きすぎ) など |
2022年度の食品ロスの推計値は472万トン(うち事業系236万トン、家庭系236万トン)であり、国民一人あたり年間約38kg、1日約103gの食品を廃棄している計算になります。
食品ロス発生によって生じる問題
食品ロスが発生するとどのような問題が起こりうるのでしょうか。
まず1つ目が環境面での問題です。食品ロスの増加によって処理されるごみの量が増え、焼却時の二酸化炭素排出や灰の埋め立てにより環境負荷が大きくなります。
2つ目が経済面での問題です。ごみの量が増えることによってごみ処理に多額のコストがかかるほか、日本は食料を輸入に頼っているのにも関わらず、多くの食品を廃棄している状況にあります。
3つ目が社会的な問題です。世界の飢餓問題がある中で、大量の食品を廃棄している現状に大きな矛盾があります。
このように、食品ロスの削減は日本だけでなく、世界的に見ても環境面、経済面、社会面において重要な課題とされています。
給食業界における食品ロスの現状
先ほどは事業や家庭全体の食品ロスについて触れましたが、給食業界における食品ロスの現状について見ていきましょう。
一つの参考データですが、学校給食(学校で提供される給食)から発生する食品ロスについて、環境省による調査では、2015年度の実績で児童生徒1人あたりの年間食品廃棄物の発生量は17.2kgであるとの結果が報告されました。
また、上記の調査で回答があった市町村の小中学校では、食品廃棄物の再生利用率は約59%。そのうち肥料化(40%)が最も多く、次いで飼料化(18%)が行われている旨の回答がありました。
給食において食品ロスが発生する原因とは?
給食において食品ロスが発生する主な原因は、「食べ残し」と「調理残渣(ちょうりざんさ)」です。食べ残しは料理や食事が提供された後、食べずに残された食品のことで、調理残渣は調理の過程で発生する不可食部分や廃棄される食品を指します。
食べ残しや調理残渣の量が多くなる原因について以下にまとめてみました。
原因 | |
食べ残し | ・嗜好や食欲の個人差 ・食事時間内に食べきれない ・当日欠席者分のロス など |
調理残渣 | ・食材の下処理時の過剰除去 ・食材発注量と使用量に差がある ・衛生管理上の廃棄(傷んだ部分の廃棄) など |
特に個人の嗜好(好き嫌い)は、学校給食の食べ残しで特に多い理由です。味や食感が苦手、あるいは家庭で食べた経験がないといったさまざまな原因が絡み合っています。
また、大量調理において調理残渣はどうしても出てしまうものですが、皮の剥きすぎやカットミスで廃棄、あるいは誤発注によって消費しきれず廃棄というケースもあるようです。
給食における食品ロスの対策①食べ残しの削減
それでは、給食における食品ロスを削減するためにどのような対策をする必要があるのでしょうか?
まずは食べ残しの量を減らすための対策について見ていきましょう。
食べ残しが多いメニューの把握
給食の食べ残しを減らすためには、どのメニューの食べ残しが多いのかについて現状を把握することが非常に重要です。
食べ残しが多いメニューを分析することによって、食品ロスが生じやすい原因を明確化。そうすることで喫食者の嗜好に合わせてメニューの提供頻度や内容を調整し、次回の献立に反映させることができるためです。
現状を把握するための方法として、食べ残しは料理ごとに分けて廃棄し、それぞれの食べ残し量を明確にすることが挙げられます。あるいは、喫食者アンケートで嗜好や満足度を調査し、苦手な食材・味付けの傾向をデータとして収集することも有効です。
このように食べ残しが多いメニューや喫食者の嗜好を把握・分析して献立を検討することは、結果的に食べ残しによる食品ロスの削減と喫食者の満足度向上の両方を実現することが可能です。
食品ロスに対する意識向上
食品ロスの削減には、喫食者自身の理解と協力が不可欠です。そのため、食品ロスに関する知識の普及・啓発も重要な取り組みの一つとなります。
事例としてある学校では、児童・生徒向けに食品ロスやSDGsに関する動画教材を活用した授業を実施しています。また、啓発効果を高めるため、食品ロス削減をテーマとしたグッズを作成・配布するなどの取り組みも行っています。
さらに、家庭での意識向上を図るため、児童・生徒だけでなく保護者に対しても食品ロスへの理解を深めるアプローチも重要だとされています。
食品ロス削減をアピールした料理提供
「食品ロス削減」をテーマにしたメニューを提供することも、食べ残しを削減するために有効な対策です。
メニュー例としては、形が不揃いな野菜(規格外の野菜)を使用した料理、あるいは野菜の皮ごと使用した料理などが挙げられます。
食品ロス削減につながるのはもちろん、喫食者に「直接的に食品ロス削減に貢献している」という意識を持たせることにも繋がります。
給食を食べる時間の確保
学校給食における食べ残しの主な原因の一つに、「給食を食べる時間が短い」という課題があります。食事時間が不足すると、食べ残しが増えるだけでなく、十分な咀嚼ができないことによる消化への負担も懸念されます。それに対する対策が「給食を食べる時間の確保」です。
例えば、ある学校では授業終了後から「いただきます」の挨拶までの時間を10分以内にする目標設定したところ、食べ残しが削減されたという例があるため、給食の準備・配膳の時間を短縮することもポイントの一つとなります。
そのためには、給食当番が効率よく作業できるよう配膳の導線を工夫したり、盛り付けがしやすいおたまや、しゃもじを使用したりするなど工夫が効果的です。
このように喫食時間を十分に確保することは、食品ロスの削減だけでなく、子どもがしっかりと食事を味わうことにも貢献します。
食事提供数の調整
食事提供数の調整も食品ロス削減に貢献する対策です。
特に社員食堂は多くの場合、予定食数(事前に見込んだ利用者数)をもとに食事を準備しますが、曜日や天気、社員の出勤状況などによって食堂の利用の有無に大きな幅があり、予定食数を正確に予測することが困難です。そのため、予定食数よりも提供数が下回ると大幅な食品ロスになってしまうこともあります。
その問題を解決するための対策が、食事の事前予約システムの導入やAIやデータ分析ツールによる食数予想です。これらの対策によって、予定食数と実際の提供数がより近くなり、食品ロスの削減につながります。
メニューサンプルをデジタルサイネージで紹介する
メニューサンプルをデジタルサイネージで紹介することも食品ロスを削減するための対策となります。デジタルサイネージとは、ディスプレイやプロジェクターなどの電子機器を用いて情報を表示するシステムのこと。
特に社員食堂では、メニューサンプルとして実際に調理した食事を食堂入口に掲示するケースがありますが、これらは掲示後に食べられることなく廃棄されてしまいます。特にサンプル数が多い場合、食品ロスが増加するだけでなく、材料費の無駄も大きくなります。
そこで、メニューサンプルの代わりに、「本日のメニュー」としてデジタルサイネージに表示させることで、食品ロスと材料費の両方を削減可能です。
給食における食品ロスの対策②調理残渣の削減
次に給食で発生する調理残渣を削減するための対策について見ていきましょう。
前述したように、調理残渣は調理の過程で発生する不可食部分や廃棄される食品のこと。この給食における調理残渣の削減には、2つの対策があります。
1つ目は、残渣の発生をできる限り抑えること。例えば、野菜の下処理では、食材の可食部を最大限に利用できるように、包丁やスライサーなどを適切に使う、あるいは皮むきはピーラーで行うといった工夫が効果的です。
2つ目は、発生した調理残渣の水切りです。調理残渣に含まれる水分を十分に切ることで、調理残渣自体の重量が軽くなり、焼却時のエネルギーやごみ処理のコストを削減することに繋がります。
これらの対策を効果的に実施するためには、調理従事者への周知と理解が欠かせません。食品ロス削減の重要性について理解を深め、具体的な方法を共有する必要があります。
給食における食品ロスの対策③飼料化・堆肥化
給食で発生してしまった食品ロスをごみとして処理するのではなく、動物の飼料や農業用の堆肥として再利用する取り組みも食品ロス対策として重要です。
実際に、小中学校の給食の食べ残しをすべて堆肥化し、近隣農家で活用する取り組みをしているという自治体も存在します。
これらの取り組みは、専用の設備の導入や地域との連携が必要ですが、食品ロス削減のほか、地域循環型社会の構築促進が期待できるでしょう。
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