献立作成や栄養計算で欠かせない資料「食品成分表」の見方を解説
食品成分表(日本食品標準成分表)は、一般的に食されている食品の成分値がまとめられたもの。管理栄養士・栄養士にとっては業務をするうえでの必要な資料の一つです。
給食管理ソフトの普及により、食品成分表がなくても成分値が献立に反映されるため、あまり書籍やデータを参照しないというケースもあるかもしれません。しかし、食品成分表の基本的な見方や、定期的に改訂される成分値の算出方法については、ポイントとして押さえておくと良いでしょう。
本記事では、食品成分表2020年版(八訂)の項目の見方や算出方法についてまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
食品成分表とは?
食品成分表(日本食品標準成分表)とは、日常的に食べられている食品の成分値を網羅的にまとめたデータベースのこと。
戦後の1950年に国民の栄養状態を改善する目的で策定され、以降は時代に応じて収載食品や成分値が定期的に改訂されています。
主な用途としては以下が挙げられます。
- 給食現場(教育機関や医療機関、福祉施設など)での献立作成
- 生活習慣病予防のための栄養指導
- 食事療法を必要とする人への食事計画作成
- 栄養学などの研究・教育分野
- 行政による栄養政策の立案 など
食品成分表では、全食品について可食部(食品として食べられる部分)100g当たりの栄養成分の量を統一して記載されており、実際は以下のように栄養成分値を算出します。
実際に算出する栄養成分値 =知りたい食品の100g当たりの成分値×(使用量(g)÷100) 【例:普通牛乳150g当たりのたんぱく質量を知りたいとき】 ★普通牛乳100g当たりのたんぱく質量:3.3g 3.3g × 150/100 = 4.95 ≒ 5.0g 普通牛乳150g当たりのたんぱく質量は5.0gとなる |
上記のように算出した栄養素含有量を異なる食品間で比較がしやすいことも、食品成分表の特徴です。
食品成分表は、日本人の健康的な食生活を支える基礎的なデータとして、さまざまな分野で活用されています。特に管理栄養士・栄養士にとっては栄養学を学んだり、実践的な食事管理を行ったりするうえでも、重要な参考資料とされています。
関連ページ:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年:文部科学省
食品成分表の項目の見方と各成分値の算出方法をチェック
食品成分表にある各食品の成分値は項目ごとに下記のように記載されています。
穀類 | 可食部100g当たり | |||||||||
廃棄率% | エネルギーkcal | 水分g | たんぱく質 | 脂質 | ||||||
アミノ酸組成によるたんぱく質g | たんぱく質g | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g | コレステロールmg | 脂質g | … | |||||
食品番号 | 食品名 | |||||||||
01001 | アマランサス 玄穀 |
0 | 343 | 13.5 | (11.3) | 12.7 | 5.0 | (0) | 6.0 | … |
01002 | あわ 精白粒 | 0 | 346 | 13.3 | 10.2 | 11.2 | 4.1 | (0) | 1.3 | … |
… | … | … | … | … | … | … | … | … | … | … |
次から食品成分表の各項目の名称や見方について見ていきましょう。
食品番号
食品成分表における「食品番号」とは、5桁で記載される食品固有の番号のこと。食品成分表では収載食品を1〜18の食品群に分類・配列しています。
▼食品群の分類
食品群 | 食品群 | ||
---|---|---|---|
1 | 穀類 | 10 | 魚介類 |
2 | いも及びでん粉類 | 11 | 肉類 |
3 | 砂糖及び甘味類 | 12 | 卵類 |
4 | 豆類 | 13 | 乳類 |
5 | 種実類 | 14 | 油脂類 |
6 | 野菜類 | 15 | 菓子類 |
7 | 果実類 | 16 | し好飲料類 |
8 | きのこ類 | 17 | 調味料及び香辛料類 |
9 | 藻類 | 18 | 調理済み流通食品類 |
食品番号の上2桁は食品群を、下3桁は食品群の中での順番を意味します。
例えば普通牛乳の場合だと、食品番号は「13003」。上2桁は「13」であるため、普通牛乳は「13群の乳類」に分類されていることが分かり、下3桁の「003」から、「乳類の中で3番目に収載されている食品」ということが読み取れます。
食品名
食品成分表の食品は、原材料となる食品の場合は学術名や慣用名が使用されています。例えば、一般的に「かぼちゃ」と呼ばれる野菜は「西洋かぼちゃ」、「あかうお」と呼ばれる魚は「アラスカめぬけ」と記載されています。
加工食品の場合は一般的に呼ばれている名称や食品規格基準などの名称が採用されています。
また、食品は食べる部位や状態によって細かく分類されています。例えば、「にんじん」といっても、「皮つき」あるいは「皮なし」なのか、「生」「ゆで」「油いため」「冷凍」のどの状態なのかに応じて、それぞれの成分値が記載されています。
このように食品を参照する際は、目的に合わせて該当のものを選ぶ必要があることが基本です。
廃棄率
廃棄率は、食品の重量に対する廃棄部分の割合を表した数値のこと。食品成分表では、10%未満は整数、10%以上は5の倍数で示されています。
廃棄部分というのは、魚の頭部・骨、野菜・果物の皮や芯の部分などが挙げられます。
食品成分表では「可食部100g当たり」の成分値を示しているものの、廃棄率に関しては食品全体に対する廃棄される部分の質量が割合として記載されていることも特徴です。
エネルギー
食品中の栄養成分が体内で代謝される際に発生する熱量を「kcal(キロカロリー)」の単位で表したものです。
八訂におけるエネルギーは、以下の成分値にエネルギー換算係数を乗じて算出し、その値を収載値としています。
- アミノ酸組成によるたんぱく質
- 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量
- 利用可能炭水化物(単糖当量)
- 糖アルコール
- 食物繊維総量
- 有機酸
- アルコール
従来の七訂(2015年版)では、間接分析により得られたたんぱく質、脂質、差引き法によって求められた炭水化物がエネルギー算出に使用されていましたが、八訂では異なるエネルギー算出方法が採用されました。
これにより、八訂では実際のエネルギー摂取量により近い値に変更されました。
水分
食品成分表には「水分」という項目で、収載食品の水分量が「g」で記載されています。
関連記事:栄養価計算において水はどうする? 栄養成分や量の疑問を解決!
たんぱく質
たんぱく質は、体の組織、酵素やホルモンの材料、エネルギー源として重要な栄養素です。
食品成分表には以下2つの項目を収載しており、いずれも単位は「g」で表示します。
アミノ酸組成による たんぱく質 |
食品中の各アミノ酸量に基づき、アミノ酸の脱水縮合物の量として求めた値で、エネルギーの算出に使用される |
たんぱく質 | 基準窒素量に窒素-たんぱく質換算係数を乗じて算出した値アミノ酸組成によるたんぱく質に記載がない場合に、エネルギー算出に使用される |
脂質
脂質は、有機溶媒に溶解する有機化合物の総称で、中性脂肪やリン脂質、ステロイドなどが含まれます。体内においてエネルギー源や細胞の構成成分として機能することが特徴です。
食品成分表における脂質は、以下3つの項目で記載されています。
脂肪酸のトリアシルグリセロール当量(g) | 食品中の各脂肪酸量の値をトリアシルグリセロールに換算し、総和して算出した値エネルギーの算出に使用される値である |
コレステロール(mg) | 食品中では、遊離型とエステル型(脂肪酸と結合した状態)で存在する |
脂質(g) | 有機溶媒に溶ける有機化合物の総量トリアシルグリセロール当量の収載値がない場合に使用する |
炭水化物
炭水化物は、主に体内においてエネルギー源として利用される栄養素です。食品成分表においては、6つの項目に細分され、各成分値が記載されています。
利用可能炭水化物 (単糖当量)(g) |
食品中の利用可能炭水化物(でん粉や単糖類・二糖類など)を、単糖の質量に換算して合計した値エネルギーの算出に使用 |
利用可能炭水化物 (質量計)(g) |
利用可能炭水化物の質量の合計 |
差引き法による 利用可能炭水化物(g) |
可食部100gから水分・たんぱく質・脂質・食物繊維・有機酸・灰分などの合計(g)を差し引いて求める値エネルギーの算出に使用(※利用可能炭水化物(単糖当量)の収載値がない場合) |
食物繊維総量(g) | ①プロスキー法②プロスキー変法③AOAC.2011.25法①~③のいずれかの方法により得られた食物繊維の総量エネルギーの算出に使用 |
糖アルコール(g) | 2020年版よりエネルギー産生成分として収載エネルギーの算出に使用 |
炭水化物(g) | 2015年版までのいわゆる「差引き法による炭水化物」(食品可食部100gから水分・たんぱく質・脂質・灰分等の合計(g)を差し引いた値) |
灰分
灰分とは、食品を一定の条件下で燃焼(灰化)させた際に残る成分で、食品中の無機質の総量を反映していると考えられています。
差引き法による利用可能炭水化物の算出に用いられるほか、水分と同様にエネルギーの産生に関与しない成分であり、分析において成分値の確からしさを検証する一つの指標として扱われています。
食塩相当量
食塩相当量とは、食品中のナトリウム量から換算した数値であり、以下の数式で求められます。
食塩相当量(g)=ナトリウム(mg)× 2.54÷ 1,000 |
ナトリウム量に乗じる2.54とは、食塩(NaCl)を構成するナトリウム(Na)の原子量と塩素(Cl)の原子量から算出したものです。
有機酸
有機酸はクエン酸やリンゴ酸、酢酸など分子内にカルボキシル基を持つ有機化合物のこと。2015年版では有機酸(酢酸除く)は「差引き法による炭水化物」として含まれていました。しかし、2020年版からは炭水化物とは別に「有機酸」として収載されました。
無機質
無機質は体の機能の維持・調節に欠かせない栄養素。食品成分表には、人体に必須と認められた以下の項目が収載されています。
ナトリウム(mg) | 成人の一日の摂取量が 概ね100mg以上の無機質 |
カリウム(mg) | |
カルシウム(mg) | |
マグネシウム(mg) | |
リン(mg) | |
鉄(mg) | 成人の一日の摂取量が 100mgに満たない無機質 |
亜鉛(mg) | |
銅(mg) | |
マンガン(mg) | |
ヨウ素(μg) | |
セレン(μg) | |
クロム(μg) | |
モリブデン(μg) |
ビタミン
ビタミンは人体の機能を正常に維持するための有機化合物であり、体内で合成することがほとんど不可能なため、食物から摂取する必要がある栄養素です。
食品成分表には、以下の脂溶性・水溶性のビタミンがそれぞれ収載されています。
脂溶性ビタミン | ビタミンA | レチノール(μg)α‐カロテン(μg)β‐カロテン(μg)β-クリプトキサンチン(μg)β-カロテン当量(μg)レチノール活性当量(μg) |
ビタミンD(μg) | ||
ビタミンE | α‐トコフェロール(mg)β‐トコフェロール(mg)γ‐トコフェロール(mg)δ‐トコフェロール(mg) | |
ビタミンK(μg) | ||
水溶性ビタミン | ビタミンB1(mg) | |
ビタミンB2(mg) | ||
ナイアシン(mg) | ||
ナイアシン当量(mg) | ||
ビタミンB6(mg) | ||
ビタミンB12(μg) | ||
葉酸(μg) | ||
パントテン酸(mg) | ||
ビオチン(μg) | ||
ビタミンC(mg) |
食品成分表にある成分値の見方にも注意
食品成分表の収載値は基本的に可食部100g当たりの数値で記載されているものの、食品によっては、数値以外で記載されていることがあります。
項目 | 項目の読み方 |
‐ | 未測定 |
0 | 最小記載量の1/10未満(※)、または検出されなかったもの(※)ヨウ素・セレン・クロム・モリブデンは3/10未満、ビオチンは4/10 |
Tr | 微量(Trace、トレース)を意味する最小記載量の1/10以上、5/10未満であることを示す |
(数字) | ・類似食品の収載値から推計あるいは計算で求めた値・諸外国の食品成分表の収載値から借用した値・原材料配合割合等ともとに計算した値 |
(0) | 推定値0を示す未測定で、文献等から含まれていないと推定されるもの |
(Tr) | 推定値Tr(微量)を示す未測定で、文献等から微量が含まれると推定されるもの |
このように成分値が数値とは違う表記がされている場合は、未測定あるいは推定値、微量であるケースがあることを理解しておきましょう。
食品成分表は改訂版の使用を推奨
食品成分表は5年ごとに改定が行われます。改訂版の食品成分表は従来のものと比較して、科学的により確かな値が収載されているので、献立作成や栄養指導に使用する際は、最新のものを使用するのが望ましいとされます。
そのため、文部科学省により食品成分表の改訂が発表された後は、業務上で使用する資料やツールのデータ更新が必要です。献立作成に使用する給食管理ソフトのデータ更新も例外ではありません。
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