給食を導入するメリット・デメリットとは?学校給食の方式についても解説
学校をはじめ、病院や福祉施設、社員食堂など、さまざまな場所で提供されている給食。喫食者の空腹を満たすというイメージを持たれがちではありますが、健康の保持増進や食文化の理解など、さまざまなメリットが期待されています。
本記事では、給食の役割や期待されるメリットについて紹介するほか、デメリットについてもまとめました。
目次
給食の役割とは?
給食とは、学校や事業所、医療機関、介護施設などの施設で集団に対して提供される食事のこと。多くの給食施設では栄養士・管理栄養士によって献立が立てられ、栄養価や食材の安全性に配慮されたメニューが提供されます。
給食が提供される施設としては以下が挙げられます。
給食が提供される施設 | |
教育機関 | 小学校中学校一部の高等学校幼稚園 など |
医療機関 | 病院診療所リハビリ施設 など |
福祉施設 | 児童福祉施設(乳児院、保育園など) 特別養護老人ホーム老人保健施設デイサービスセンター など |
職場・会社 | 事業所工場 など |
その他 | 自衛隊矯正施設 など |
それぞれの施設では、喫食者のニーズや施設の特性に合わせた給食の献立が設定されており、例を挙げると学校給食では児童・生徒の成長期に必要な栄養バランスを考慮した食事、病院給食では疾病の診断に基づいた治療食が提供されています。
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給食に期待できるメリット7つ
それでは、給食に期待できるメリットについて次から見ていきましょう。
メリット①適温での食事提供が可能
弁当との比較になりますが、給食は適温での提供が可能な食事です。食事提供時の温度は食事のおいしさにつながる要素の一つであり、重要視されています。
適温で食事提供をするための工夫の例として、食事の提供時間に合わせたタイムマネジメントや保温・保冷機能のある設備(温冷配膳車や保冷保温機能に優れた食缶など)の導入などが挙げられます。
このように給食施設では、温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たくといったように、調理や配膳の過程で適切な温度が保たれるように工夫がされています。
メリット②栄養バランスが考慮された食事の提供
給食では栄養バランスが考慮された食事を提供できることもメリットの一つです。
給食は通常「日本人の食事摂取基準」をもとに、喫食者の年齢や性別、活動レベルに応じて必要とされる栄養量を算出し、その必要栄養量から栄養士・管理栄養士が献立を計画します。(学校給食の場合は「学校給食摂取基準」、病院の治療食の場合は各種ガイドラインをもとに栄養量を算出)
献立は多くの施設で「一汁三菜」を基本としており、必要栄養量を満たすように献立が計画されています。つまり、各施設の喫食者に合わせて、必要なエネルギーや栄養素が考慮された食事が食べられるのです。
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メリット③季節や地域を考慮した食材の利用
給食は、季節や地域を考慮した食材を利用できることもメリットです。
日本には四季が存在するため、各季節に応じた旬の食材を使うことが食文化を楽しむうえで重要だとされています。旬の食材は栄養価が高く、コストが抑えやすいことから、給食のメニューにも積極的に取り入れられます。
また、地域の特産品や郷土料理をメニューに反映することも多く、それらがその地域の伝統的な食材や料理に触れる機会になるとともに、地元の食材が使用されることで地産地消(※)を促進します。
(※)地産地消:国内の地域で生産された農林水産物を、その生産された地域内において消費すること
メリット④安全性の高い食事の提供
給食を提供する施設では、集団食中毒の発生を予防および安全性の高い食事を提供するため、厳格な衛生管理基準に沿った対策がされています。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」や文部科学省の「学校給食衛生管理基準」には、安全な食事提供をするための具体的な衛生管理やガイドラインが示されており、給食施設はこれらをもとに衛生管理の徹底を行っています。
- 手洗い設備の充実と手洗いの徹底
- 適切な温度管理(食材加熱時の中心温度や調理後の温度管理)
- 厨房内の衛生管理
- 検収時や下処理段階での食材の管理
- 調理従事者の健康管理 など
このような指針をもとにした衛生対策が、安全性の高い食事の提供につながっているのです。
メリット⑤共食による社会性の育成につなげる
給食は誰かと食事をともにする(共食)ため、それが社会性の育成に大きく貢献します。他者と食事をとると、食べ物に関する話題や日常会話が生まれやすく、自然とコミュニケーションを取りやすくなるとされています。
特に学校給食において共食は、成長期の子どもの社会性をはじめ、マナー・礼儀への理解を深めるためにも重要な要素として捉えられています。
メリット⑥食育としての役割
給食は食育においても重要な役割を果たします。
特に学校給食は児童・生徒が食物に関する知識を深め、健康的な食生活を実践するための学びの機会になっています。というのも、給食で提供される食事は栄養バランスに配慮されているため、自然と栄養バランスの取れた食事を学ぶことにつながっています。
また学校の授業の一環として、児童・生徒が育てたじゃがいもを給食のカレーライスにするというように、学校で育てた野菜を給食に使うという機会を設けている学校も。このような体験を通じて、食材がどのように生産され、給食として自分たちの手元に届くかという過程を学ぶ機会にもなっているのです。
メリット⑦食事準備の負担軽減につながる
給食があることで食事準備の負担軽減が期待できます。
例えば、昼食が弁当である場合、食材購入や調理といった負担がある一方で、給食はそれらの負担軽減に大きく貢献します。
学校給食の場合であれば、保護者が子どもの昼食を準備する必要がなくなり、時間的な負担を軽減するのにつながります。
給食のデメリット4つ
給食には多くのメリットが期待できる一方で、デメリットも存在します。
デメリット①食べ物の好き嫌いに対応できない
給食は栄養バランスを考慮したうえで献立が計画されるため、個々の嗜好や好き嫌いに対応するのは難しいでしょう。
特に子どもは味覚が成人よりも敏感であるため、学校給食では好き嫌いによる食べ残しが少なくありません。
しかし給食は、家庭で馴染みのない食材に触れられる機会であり、食の幅を広げる役割も担っていることも理解しておく必要があります。
デメリット②アレルギー対応は細心の注意を払う必要がある
食物アレルギーによるアナフィラキシー症状は命に関わる事象であるため、給食のアレルギー対応は細心の注意が求められます。
特に小中学校あるいは保育所・幼稚園においては、子ども自身がアレルゲンとなる食材を避けるというのは困難なため、施設側が保護者と連携しながらアレルゲンを含む食品を徹底的に管理し、以下のような対応をすることが欠かせません。
- 代替食材の準備(牛乳の代わりにアレルギー対応ミルクなど)
- 配膳時は色違いのトレーを使用
- 調理器具の使い分け(コンタミネーションの防止)
- 給食会議において、アレルギー対象者の情報共有
- 緊急時(アナフィラキシー症状が出たときなど)の対応 など
もちろん、教育機関以外の給食施設においても、アレルギーに配慮し、アレルゲン情報を提供したり、個別対応したりすることも求められます。
このように食物アレルギーは命に関わるため、細心の注意を払いながら給食運営をする必要があります。
デメリット③ゆっくり給食が食べられない
学校給食におけるデメリットですが、喫食時間が短く、給食をゆっくりと食べられないという点も挙げられます。
学校の方針や地域によって異なるものの、昼休みの時間は45分程度に設定されているため、配膳や片付け等を考慮すると、実際に給食を食べる時間は20分程度。児童や生徒から「給食を食べる時間が短い」という声も実際にあるようです。
喫食時間が短いと食事を噛む回数が少なかったり、食べ残しをしてしまったりといった問題も出てきてしまいます。そのため、学校によっては配膳当番の人数を増やす、一斉に「いただきます」の挨拶はせずに、配膳が完了した人から食べ始めるといった対策をしているケースもあります。
デメリット④経済的な負担になり得る
学校給食では、給食の食材料費を徴収するのが一般的です。そのため、複数の子どもがいる家庭や経済的困難な状況にある家庭にとっては、毎月の給食費の支払いが家計の負担になるケースがあります。
自治体によっては給食費の無償化実施や、全額あるいは一部を支給する制度(条件有)を実施するなど、給食費の負担が軽減できるような制度を整えている地域もあります。しかし、実際には給食費未納はしばしば注目される問題となっています。
学校給食の実施方式にはいくつかの方法がある!それぞれのメリット・デメリットとは
学校給食には調理場所や運営方法によっていくつかのタイプがあります。それぞれにはコストや食事の質、個別対応のしやすさなど異なるメリット・デメリットが存在し、学校の規模や地域の状況によって最適な方式が選ばれています。
次からそれぞれの方式の特徴やメリット・デメリットについて見ていきましょう。
自校方式
自校方式は、学校内にある給食室・厨房で調理を行い、その学校の児童・生徒に給食を提供する方式です。
メリット | デメリット |
---|---|
・配送の手間がない ・適温での提供が可能 ・学校独自のメニューが提供可能 ・アレルギー等個別対応がしやすい | ・学校ごとに調理設備が必要 ・人員の確保が必要 |
学校内で調理を行うからこそ融通がきくものの、設備費や人件費といったコストが高くなるという特徴があります。
親子方式
一つの学校が給食を調理したのち、近隣の学校にも配送・提供する方式です。
調理を行う学校が「親」、給食を受け取る学校が「子」にあたり、調理員や栄養士は親の学校にいるということになります。
メリット | デメリット |
---|---|
・複数校分の調理で効率が良い ・小・中学校(近隣)が親子の場合は、中学校進学後も同じ給食が食べられる | ・配送のための車や人員が必要 ・搬入・搬出のための設備や時間が必要 |
自校方式と類似しているものの、複数の学校に対応し調理効率が図れる一方で、親学校からの配送する設備や手間が生じる点が課題となります。
給食センター方式
複数の学校に対して、給食センターが一括で調理を行い、各学校へ配送する方式。
メリット | デメリット |
---|---|
・大量調理で作業効率が良い ・自校式と比較し、運営費用が安い ・近隣の学校と同じ品質の食事が提供可能 | ・配送のための車両や人員が必要 ・初期費用が高い ・食中毒が発生した場合、被害が大きい ・個別のアレルギー対応が限定的 |
複数の学校に一貫した品質の給食が提供可能で、なおかつコスト面でメリットがあります。しかし、食中毒が発生した場合は被害が大きいため、食中毒対策として厳格な衛生管理が求められます。
業者弁当方式
給食専門の業者が弁当を調理を行い、学校に提供する方式です。
学校内で調理はせず、調理〜配送まで外部の業者に委託します。
メリット | デメリット |
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・施設設備の投資が必要ない ・調理の手間が無い | ・適温での提供が難しい ・個別のアレルギー対応が限定的 |
学校側で調理の手間や設備が不要であることが最大のメリットでしょう。ただ、業者の調理施設が遠方にあると食事が冷めてしまうことや品質の一貫性が課題になることも考えられます。
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