高齢者の食事に関する注意点は? 介護や食事介助で知っておくべきポイントを解説
高齢者が食事をするときは、さまざまな点に配慮する必要があります。
加齢によって食欲が減ってしまったり、誤嚥のリスクが出てきたりと食事の面で影響が出てきます。
家族にはいつまでも元気に健康でいてほしいもの。年を重ねても食事を楽しんでしっかり栄養を摂ってもらうことは大切なことです。
そのためには本人が注意することはもちろん、周囲のサポートも欠かせません。
こちらの記事では、高齢者の食事に関するさまざまな注意点についてご紹介していきたいと思います。
介護や食事介助をする際に知っておきたいことをまとめているので、ポイントをおさえておきましょう。
目次
高齢者の食事に影響する身体的な注意点とは
高齢者は年を重ねるにつれて心身の機能低下が生じてきます。
膝や足腰が弱ってくると歩行や階段の上り下りなどが辛くなってくるのと同じように、歯や筋肉の衰えから噛むことや飲み込むといった能力が衰えてくることも。
今までどおり食事が食べられなくなると、食生活にも影響が出てきてしまいます。
健康な生活を送るためにも、毎日の食事はとても大切なものです。
そこで、ここではあらかじめ知っておきたい高齢者の食事に影響する身体的な問題や注意点を解説いたします。
これから介護をする予定がある方は、ぜひ頭に入れておきましょう。
高齢者の食事に影響する身体的な注意点1:味覚が鈍くなる
普段私たちが感じる味覚には、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などがあります。
これらをキャッチするのが、舌の表面にある「味蕾(みらい)」のなかにある「味細胞(みさいぼう)」であり、この細胞から感知した信号が脳に伝わり、味を感じることができているのです。
しかし、この伝達がうまくいかないと、味を感じづらくなってしまいます。
例えば、味細胞の再生に必要な亜鉛が不足すると、味覚障害を引き起こす原因となりますが、加齢によって吸収や消化機能が衰えて、せっかく摂取した亜鉛が体外へと排出されやすくなることも。
舌の表面や口内の粘膜にある味覚機能の生理的低下や、唾液分泌低下などでも味が分かりづらくなるといわれています。
高齢者の食事に影響する身体的な注意点2:消化機能の低下
私たちの身体のなかで毎日働いてくれている消化器官も、機能が低下しやすくなります。
胃や腸の消化筋層が委縮することで、消化液の分泌も低下傾向に。
若いころと変わらない分量の食事を摂っていると消化不良が起こったり、胃もたれしやすくなったりします。
また、便を体外に送り出すための腸内の蠕動運動(ぜんどううんどう)も減少し、便秘が起こりやすくなるので注意が必要です。
高齢者の食事に影響する身体的な注意点3:脳神経機能の低下
加齢によって起こる大きな影響の一つに、脳機能の低下が挙げられます。
神経細胞数の減少や脳血流量の低下によって、記憶力や判断力などの認知機能の低下が進む要因に。
高齢者に物忘れの記憶障害が起こるのは、これらが原因といわれています。
認知機能が衰えると食事したことを忘れてしまったり、食べ物そのものを認識できなかったりと、食事にも影響が出てきます。
高齢者の食事に影響する身体的な注意点4:精神機能の低下
高齢者の精神機能の低下には、さまざまな要因があると言われています。
例えば、高齢者特有のライフイベントとして起こりえるのが身近な人との死別です。高齢になると配偶者や家族、友人などとの別れの経験が増えていき、その度に喪失感を味わうことになります。
また、退職によって職業や社会的地位を喪失することも精神的に影響し、これらが生きがいの喪失や孤独感となってうつ病を発症する原因にも。
精神的に不安定になると食欲が低下し、食事自体ができないような状況に陥ってしまう場合もあるため、心のケアにも充分な注意が必要です。
高齢者の食事の注意点5:筋力の低下
高齢者は全身の筋肉量が減少していきます。
筋肉を構成する筋繊維の萎縮や、筋繊維数の減少が起こるためです。
筋力の低下は、食べ物をかみ砕く咀嚼力にも影響します。咀嚼ができなくなると、さらに咀嚼したものを飲み込む嚥下(えんげ)もしづらくなってしまいます。
高齢者はこれらに加えて歯の欠損や唾液分泌の低下も重なるため、若いころと比べて食事へのハードルがどうしても高くなってしまうのです。
高齢者が食事の際に気を付けるべき注意点
食事に影響を及ぼす高齢者の身体的な注意点をご紹介しましたが、日々の食事中にこそ注意する場面が増えてきます。
ここでは高齢者が食事をする際や、また食事を提供する際にどのようなことに注意するべきかをまとめてみました。
高齢者の身体の特徴を踏まえたうえで、以下の点にも配慮しましょう。
高齢者が食事をする際の注意点1:味覚の変化
高齢者は健康のために味の薄いものを食べているイメージがあるかもしれませんが、実際には味が濃いものを食べたくなる傾向にあります。
これは今まで普通に感じていた味付けも、味覚の低下によって「味が薄い」「あまり味がしない」と感じるようになるからです。すると、食事そのものが美味しく感じられず、食欲の減退にもつながります。
また味が物足りずつい調味料を入れすぎてしまうことも。塩分の摂りすぎは高血圧の原因にもなります。料理に酸味を効かせる、香辛料を用いるなど工夫をすることで、塩分の過剰摂取を防ぐことができます。
高齢者が食事をする際の注意点2:忘れやすくなる
脳機能の低下によって物忘れが進行すると、食事をしたことを忘れてしまったり、場合によっては食べ物を認識できなくなったりすることも。
食事を食べたあとでも「まだ食べていない」と再度食事を要求するのは、認知症の方に多く見られるケースです。食べていないという本人の思い込みや主張を最初から否定せず、寄り沿った家族のサポートが必要となります。
高齢者が食事をする際の注意点3:食物の誤嚥
脳機能や筋力の低下によって食物を誤嚥しやすくなることを前章でご紹介しましたが、高齢者は硬いものやサイズの大きなものを食べるときにうまく飲み込めず、こぼしてしまうことがあります。
また、水分を多く含む食事や飲み物を口にしたときに、むせたり咳き込んだりすることも。
高齢者は食欲がなくなる?食事介助の注意点やアイデアは?
高齢になるにつれて食欲が減っていくことは、一般的に誰もがよく耳にする話かもしれません。
しかし、高齢者自身にとっては、健康に悪影響を及ぼす深刻な問題です。
まず、食欲不振が続くと低栄養状態となり、筋力の低下や、体重の減少につながってしまいます。
すると、活動量が減少したり、歩行が困難になって転倒し、寝たきりの原因になることも。
そもそも年をとるとどうして食欲がなくなってしまうのでしょうか?
主な原因を以下にまとめてみました。
【高齢者の食欲低下の原因】
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高齢者を悩ませる食欲低下の原因を挙げましたが、これらを解決するためには普段の生活からどのように注意するべきかを考えていかなくてはなりません。
身体的な要因を解決することは難しいため、高齢者が少しでも食事と向き合える工夫が必要となります。
ここでは食事介助をする際の注意点として、食欲不振を防ぐためののアイデアをご紹介します。
高齢者の食欲不振を防ぐアイデア1:食べやすくする
食欲がない時、食欲を刺激するためにいろんなものをたくさん用意すると、実はそれがかえってプレッシャーになっていることも。精神的な負担にならないように、食事量を少なくするのも大事です。
完食することで食べる自信へとつながります。
誰でも好物が登場すると食事が楽しくなるので、食欲がない日は好きな食べ物を選ぶのも良いでしょう。
また高齢者の場合、食事を口に運ぶことが大変なこともあります。お箸やスプーンを使って食べるのが億劫な場合は、手でつまむ、爪楊枝で刺す、など気軽に食べやすい形態にするのも効果的です。
高齢者の食欲不振を防ぐアイデア2:環境を変えてみる
毎日同じ環境にいると、生活そのものにメリハリがなくなり、食事自体も楽しめなくなります。
特に近年は一人で食べる「孤食(こしょく)」が増えており、社会問題にもなっています。
時には家族や友人などを交えてみんなで一緒に食事をとったり、食事をする場所を変えたりするなど、食事環境を変えてみるも大切です。
また、部屋自体が暗いと気分も沈みがちになります。電球色の暖かみは料理の彩りを強調してくれるので、より一層美味しそうに見えます。
照明は身体や精神に影響するので、部屋の明るさを調節して食事に集中できる環境をつくりましょう。
高齢者の食欲不振を防ぐアイデア3:料理の見た目を工夫
食事は見た目の第一印象で「美味しそう」「きれい」と視覚から判断されます。
見た目を工夫するというのは、料理の彩りを華やかにしたり、盛り付ける食器に変化をつけたりすること。
暖色の赤や黄、また緑色の食材を使うことで食事を美味しく見せることができることはもちろん、料理を盛り付けるお皿も工夫できるポイントです。
例えば黒い器に白いおにぎりを盛り付けて食器とのコントラストを活かすことで、料理の映り方も変わってきます。
高齢者の食欲不振を防ぐアイデア4:行事食やイベント食を提供
代わり映えのない食事は、次第に飽きてきてしまいます。
変化の少ない生活を送っている場合は、普段と違うもの食べることで食欲増進が期待できます。
食事のなかに季節の行事を取り入れることで、見た目や味の感じ方に変化が生まれることも。
お正月やひなまつり、クリスマスなど季節に合わせた行事食やイベント食など特別な食事を提供して、楽しみをつくりましょう。
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