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2023.05.18

ソフトム通信 第81号「ナッジ」について

いつもお世話になっております。
今回は行動経済学に関する「ナッジ」についてご紹介いたします。

ナッジとは

ナッジは、米国の行動経済学者リチャード・セイラー氏らによって提唱され、セイラー氏が2017年にノーベル経済学賞を受賞したことで、広く知られるようになりました。

ナッジ(nadge)は「そっと押す」という意味の言葉です。
行動経済学では、人間は「必要とわかっているが、やらない・できない」といった、不合理な行動をする生き物であるととらえています。
この不合理さを利用し、行動を押し付けず、行動のクセから自然と選択をさせることが、ナッジの手法です。

ナッジの身近な活用例と栄養との深い関わり

日常生活の中にあるナッジをご紹介します。

 ①スーパーのレジ前の足跡マーク:
  買い物客が自ずと整列ができ、客側の混乱を回避できる。また通路を確保できる。

 ②「〇〇kcal消費」と書かれた階段:
  カロリー消費に目が行き(意識し)、階段を上りたくなり、階段を上る。

このように私たちは普段、無意識のうちに、望ましい行動を促されています。
上記の2つの活用例は、行動の押し付けもなく、自然と選択をするように促されています。

ナッジは、栄養士にも関わりが深い分野です。
農林水産省は、第4次食育推進基本計画にて「生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進」を重点事項としており、「ナッジを活用する等、健康や食に関して無関心な人達も、自然に健康になれる食環境づくりを推進する(一部省略)」としています。
人々が自発的に適正な食事選択ができる手助けを行うことが、全世代で推進されていると言えます。

また、ナッジは2019年から管理栄養士国家試験の出題基準に含まれ、実際に出題されています。
2021年(第31回)の問題はこちらです。

問題

K大学の学生食堂では、全メニューに小鉢1個がついている。小鉢の種類には、肉料理、卵料理、野菜料理、果物・デザートがあり、
販売ラインの最後にある小鉢コーナーから選択することになっている。
ナッジを活用した、学生の野菜摂取量を増やす取組として、最も適切なものはどれか。1つ選べ。(一部変更)

回答

 (1) 食堂の入口に「野菜は1 日350g」と掲示する。
 (2) 小鉢コーナーの一番手前に、野菜の小鉢を並べる。
 (3) 小鉢は全て野菜料理とする。
 (4) 小鉢の種類別に選択数をモニタリングする。




答えは(2)です。
野菜の小鉢を目立たせることで、喫食者が自然と手に取れる、良い方法と言えるでしょう。
栄養士には、食生活改善や健康づくりにおいてナッジを活用するよう求められていると言えます。

ナッジを実践するためのフレームワーク

ナッジのポイントをまとめたフレームワークの一つに「EAST」があります。
以下が4つの要素です。

  • Easy:簡単 – 手に取りやすくする、元々の設定に組み込む など
  • Attractive:魅力的-例:価格を下げる、キャッチーな名前にする など
  • Social:社会規範- 例:多くの人がやっていると伝える など
  • Timely:ベストタイミング-例:ちょうどよい時期に提案する など

このフレームワークはナッジを活かすヒントとして活用できます。

フレームワークを用いた健康づくりへの取り組み

実際に、EASTを利用したナッジの活用事例をご紹介します。
 ①特定保健指導の案内封筒の記載で、開封率をアップ
  封筒の開封率が20%に留まっていたため、記載内容を工夫した。
   (Easy)文字数を減らし、レイアウトをシンプルに
   (Attractive)「有効期限は2か月間」「数万円相当のプログラムが、今なら無料」と記載
   (Social)「全国で10万人が受けている」と記載
   →封筒の開封率が、20%→76%にアップ

 ②肥満予防のための、無糖飲料の購入促進
  企業内の自動販売機にて、以下の取り組みを実施した。
   (Easy)無糖飲料について販売割合を増やし、目の高さに配置
   (Attractive)飲料に含まれる砂糖量を実物で表示するパネルの設置、無糖飲料への「おすすめ」表示
   (Timely)飲料のエネルギーを運動・身体活動量に換算した表示を、全ての飲料へ貼付
  →飲料からの摂取エネルギー量が減少
  
ナッジ導入のポイントは、選択肢を残すことです。強制的ではなく、あくまで自発的に選んでもらうことが重要です。

ナッジを取り入れることによって、ストレスをあまり感じさせずに行動促進ができ、メリットを享受させることができます。皆様も、業務や日常生活でナッジを活用されてみてはいかがでしょうか。

参照:
・帝京大学大学院公衆衛生学研究科 ”ナッジを応用した健康づくりガイドブック”

https://www.nudge-for-health.jp/2023/01/news197/

・ 厚生労働省 ”受診率向上施策ハンドブック(第2版)”

https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000500406.pdf

・自治体ナッジシェア ”特定保健指導案内封筒の開封率向上”

https://nudge-share.jp/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E4%BF%9D%E5%81%A5%E6%8C%87%E5%B0%8E%E6%A1%88%E5%86%85%E5%B0%81%E7%AD%92%E3%81%AE%E9%96%8B%E5%B0%81%E7%8E%87%E5%90%91%E4%B8%8A